鎮守の杜100年プロジェクト

株式会社soil代表取締役 鈴木圭介が代表理事を務める一般社団法人green4(グリーンフォー)は、2025年に武蔵一宮氷川神社「鎮守の杜100年プロジェクト」を立ち上げました。「森を育て、人を育む」をテーマに「環境保全×教育活動」を展開しています。このプロジェクトでは土中環境の専門家である高田宏臣氏の指導・監修によって、踏圧や環境の変化で傷んでしまった参道を土中環境から見直し、循環する豊かな杜を目指すものです。

環境保全には地域の理解と協力が必要です。そこで埼玉大学、大宮北小学校などと連携し、また研究機関やNTT東日本、大宮アルディージャ様のご協力も得て、この氷川参道を「学びの場」としても活用しています。

一般社団法人green4が主催となり、2025年3月にクラウドファンディングを行いました。全国からたくさんのご支援をいただき、むさしの未来パートナーズ「IBUSHIGIN」(武蔵野銀行)史上第一位となる16,335,000円を記録しています。

①プロジェクトのきっかけ

 画像のように年間何本もの樹木が立ち枯れし、伐採されている状況。緑のトンネルとなっていた氷川参道が所々、ぽっかりと穴が空いたように空が見えてしまっている。最初はこの空間にモミジなどを植えていたが、うまく育たない。。そんな状況からより本質的な改修工事が必要なのではないかと感じ始める。

②自然と人の共存

 画面右上の森が氷川神社の鎮守の杜、そこから大宮駅の隣に位置するさいたま新都心駅まで約2キロの参道(画像は約800m分)が、大宮の市街地を縦断しています。埼玉県を代表するターミナル駅を持つ大宮の市街地の真ん中でこれだけの森が残っているのは、地元住民を始め、多くの方がこの「氷川参道」が魅力的であり、愛されているから。この森の木々が次々と枯れ、景観も悪くなり、倒木の恐れが高まると、魅力を失い、存続も危ぶまれるようになるでしょう。

③僕たちに何ができるか

 氷川参道で作業をしていると他の現場では考えられないくらいたくさんの人の声をかけられます。地元の僕にはよくわかりますが、こういう側面から客観的に見ると、改めてとても愛されていると感じます。そんなことをきっかけにもっと自分ごとのように参道に興味を持ってもらいたいし、僕も何かできることをしたいと思うようになりました。そこでこの参道を守るプロジェクトを立ち上げ、2つの目標を掲げます。

目標①みんなの参道にする!
   参道の保全に色々な立場から関っていただき、自分ごととして一緒にプロジェクトを進める仲間を募ります。

目標②「学びの場」にする!
   埼玉大学や大宮北小学校を中心にこの参道から「環境保全×教育活動」というWAVEを作り、リアルな
   「フィールド」で自分なりに「どのように社会と関わるか」を模索します。

このようにして僕たちはただ神社から頼まれた「施主と業者」という関係で終わらせるのではなく、保全に必要な本質的な考え方である「自然と人の共存」のために必要な「教育活動」を展開します。

④本質的な保全のために

 恥ずかしながら僕の勉強不足で、「グリーンを使った空間演出」というデザイン的なものを中心に考えて、樹形や樹木の組み合わせに重点を置き、本質的な環境に与える影響や環境に対して「造園業」としてのどのようなアプローチができるかについて考えていなかったように思います。地元住民である僕がこの氷川神社で本気で保全を行いたいと考えた結果、土中環境の専門家であり、造園家でもある高田宏臣氏に辿り着き、監修、指導として関わっていただくことができました。愛情深い高田さんとスタッフの皆さんのおかげでこのプロジェクトの根幹がしっかりと出来上がりました!「学びの場」を提供したつもりでいましたが、すっかり弊社の「学びの場」となりました。

⑤枯れの原因と施工の目的

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 環境の大きな変化ももちろんありますが、最も大きな原因は「踏圧」による土中環境の悪化です。踏圧によりカチカチになった地面では、雨水が垂直方向に浸透することができず、コンクリートと変わらない状況。そして落ち葉も全て清掃されて微生物が増える環境になく、土中を掘ってもミミズも出てきません。この状況から水が垂直方向に地中深くの水脈まで届くフカフカな土壌に変えていくことを目指します。

 水が地中深くまで届くとその水みちを通って根が伸び、15mを超える樹木は夏の暑い日に1本あたり、ドラム缶1本分(約200リットル)の水を根から吸い上げ、空気中に蒸散させます。森は「天然のクーラー」となるのです。このように森を作ることは、景観を良くすること以外にも、市街地が直面している環境問題に対してアプローチする一つの手段となり得ます。

⑥具体的な改善手法

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 既存樹や枯れた切株を中心にして、根の張り方や水の流れを見て大穴の位置を決め、図面のように焼杭を深く打ち混みます。グリ石、ワラ、炭、クンタン、落ち葉を使って施工。この感覚が難しく、高田さんにご指導いただきながら進めます。目的はとにかく水が浸透する土壌作り。そこにたっぷり菌糸が張ったスペシャルな苗木を丁寧に植えていきます。このやり方で施工すれば自動散水などは必要なく、グイグイ根っこを地中深くまで伸ばします。

⑦枯れたケヤキの御神木の役割

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 35年前に枯れてしまったケヤキの御神木が、銅板を被せ、コンクリートで固め、鉄筋で支えられて保存されていました。倒木の恐れもあるため、このプロジェクトを機会に土に戻すことになりました。この御神木は参道で一番大きなケヤキの大木でした。どの樹木よりも深く根を張り、周辺の環境を整えていたはずです。その幹や根は全て有機物として微生物の餌となり、水みちとなり、小さな苗木たちの助けになります。枯れた樹木には大きな役割があるのです。その役割を全うしていただくため、切株の周りのコンクリや鉄筋、銅板を撤去し、水が浸透しやすい環境を作り、切株が腐植していく手助けをいたしました。数年でこの苗木が大きくなり、やがてこの切株を超えるくらい成長した頃には、豊かな森として循環し始めていることでしょう。

⑧埼玉大学と連携し「学びの場」をプロデュース

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 埼玉大学教育学部では「プラネタリーヘルス」の授業を行なっています。人間の健康と地球の健康は繋がっているという考え方から、「どのように社会との関わるか」を模索します。その授業の一環としてこの「鎮守の杜100年プロジェクト」に対して自分たちにできることは何かを一緒に考えています。参道に一番近い大宮北小学校の「総合学習」の授業を担当させていただき、埼玉大学の学生にもどうしたらより伝わりやすいか、自分なりのアプローチの仕方を提案してもらいました。

 また、毎年恒例で行われていた「参道清掃」では、落ち葉を「ゴミ」そして掃除していましたが、樹木を保全するための貴重な資源であり、本質的な地域貢献としての「参道清掃」のあり方をお伝えしました。これが、毎年恒例になっていくと思います。

 本質的な「環境保全」には地域住民の協力が必要です。その理解と郷土愛を深めるための「教育活動」が欠かせません。僕たちは「森を育て、人を育む」をテーマに、ここ「氷川参道」からたくさんの方に発信していくつもりです。